肥満対策として加糖飲料に課税を=米医学研究所

ウォールストリートジャーナルからのニュース。肥満は昔から米国の問題になっていましたが、健康そのものより医療保険を圧迫していることが問題になっています。

この記事はこちら(肥満対策として加糖飲料に課税を=米医学研究所)を引用しています。

日本のたばこもそうですが、健康によくないというのであれば消費者を抑制するのではなく、生産者に対してペナルティを課すべきだと思います。

肥満症が根強い社会問題になっている米国では、年間の医療保険費の数十億ドルを肥満治療が占めている。この傾向を止めるには、学校や企業、医師などによる集中的な対処法が必要だとする報告が8日、発表された。

この報告は米連邦政府に保健政策の助言を行う独立系の米医学研究所(IOM)が発表したもの。IOMは報告書の中で、少なくとも1日60分の運動時間を 学校に義務付けることや、加糖飲料への課税を検討することなどを推奨している。また食品会社には18歳未満の子ども向けの商品の栄養基準を改善するよう訴 えており、仮に企業が自主的に対応しない場合、政府による栄養基準の義務化を検討するよう勧めている。

学校のランチでフルーツや野菜を選ぶ子どもたち(米コロラド州デンバー、3月)。米国では子どもの約17%が肥満症

医師に対しては、さらに踏み込んだ患者のスクリーニング検査と、肥満防止カウンセリングの実施を増やすべきだとしている。また企業に対しては、健康的な食生活の啓発活動を行うことや、肥満関連治療などを健康保険の対象に含めるよう訴えている。

特に学校を肥満防止のための「ナショナル・フォーカル・ポイント(国を挙げた取り組みの焦点)」とすべきだと報告書は訴えている。子どもたちは学校で、起きている時間の半分を過ごし、1日に必要なカロリーの実に半分を摂取するからだ。

まとめると、これらの推奨事項は、食物の過剰摂取やジャンクフードの消費、運動不足を減らすよう生活環境を変えることを目的にしている。報告書の執筆者らは、肥満症の蔓延は個人の意志力だけでは抑えられないと訴えている。

しかし、これらの変革を実現させるのは難しい。報告書にある推奨事項の多くは数年前からすでに言われていたことで、IOMによる前回の報告書にも書かれている。ところが、特に連邦レベルでの反対勢力が多くの変革の実現を阻んできた。

一部の市や州ではこの数年、加糖飲料に対する課税の検討が行われてきたものの、飲料業界は数百万ドルをロビー活動や広告に費やし、これに反対する活動を行ってきた。結果、いまだに課税は実現していない。

オバマ政権はミッシェル大統領夫人の「レッツ・ムーブ」キャンペーンを通じ、子どもの肥満症対策を主要政策の1つとしてきた。これにより公的補助を受け ているスクールランチの栄養が見直され、以前よりも野菜やフルーツ、ホールグレイン(全粒粉)が多く供されるようになったほか、栄養価の低い食品を学校か ら排除した。

しかし米議会は、ピザをスクールランチの皿にのせまいとするオバマ政権の努力を妨害した。ピザには通常、野菜とみなされる材料が含まれているというのが 理由の1つだ。また、子ども向けの食品と飲料に対する任意の栄養基準を立案するため、2009年に設立された連邦4機関による作業部会は、議員と食品会社 からの反対に遭い、たなざらしのままになっている。

米飲料業協会(ABA)は、IOMが運動に重点を置いたことを評価する一方、糖分を含む飲料の販売に対する規制を是認する点を批判した。「糖分を含む飲料をやり玉に挙げた差別的な政策を主張することは間違った対処法だ」とABAは声明の中で述べている。

ABAは糖分を含む飲料に対する課税が肥満症を減らす一助になるとの証拠は限定的だ、としたうえで、米国民が摂取するカロリーのうち、糖分を含む飲料は そのわずか7%を占めるにすぎないと訴えている。ABA広報担当のクリス・ギンドルスパーガー氏は、商品のカロリーを減らし、容器を小さくすることにおい て「われわれは、実は主導者である」と述べている。

IOMの報告は、ワシントンで開催された米疾病対策予防センター(CDC)主催の「ウエイト・オブ・ザ・ネーション」会議で公表された。米国の肥満症は この10 年で、子どもおよび成人ともに微減しているものの、依然として米国人の3分の2が太り気味や肥満症であり、深刻な肥満症を患っている人の数も増え続けてい る。

この傾向がどこへ向かっているのかは定かではない。7日発行の米予防医学ジャーナルに掲載された研究によると、2030年には米国の人口の42%が肥満 症になると予測されている。CDCの統計によると、2009-10年は成人の35.7%、子どもの16.9%が肥満症だった。

公衆衛生担当の職員が懸念するのは、現在1250万人余りの肥満症の子どものうち、どのくらいの割合が成人になっても肥満症のままでいるかということ だ。また医療保険の負担額の上昇も懸念の1つだ。肥満症は2型糖尿病や心臓疾患といった、治療費が高くつく慢性疾患と関わりがあるからだ。肥満症に関連す る疾病の治療費の見積もりは幅があるが、IOMでは年間1902億ドル(約15兆2000億円)と試算している。

引用:ウォールストリートジャーナル 日本版(2012/05/09)
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_439641

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